はじまり

小川さん
研修医になって最初に回った科は皮膚科でした。

その時にもらった手紙です。
その年の11月に彼女は亡くなりました。

悪性黒色腫という皮膚の癌でした。抗がん剤も手術も放射線も、すべての治療行為としての選択肢がなくなった時、大学病院を退院することになりました。

バス停に追いかけて行った時、彼女はこう言いました。
「自分の仕事に戻って」
「行って、先生」

それが私の聞いた彼女の最期の声となりました。

あとからこの手紙を看護師から受け取った時、私の中で何かが変わりました。
それまでは漫画の世界にいました。
現実を受け入れ、相手にしてあげられることを苦しんで苦しんで生み出すことを彼女に誓いました。

この時に、私は内科とバイオリンに生涯を投じようと決心しました。